新型コロナ感染症で、世界中で経済に大きな影響が出ているのは周知の事実かと思います。度重なるロックダウン、外出制限、イベント規制などに伴い経済的にも雇用の面でも甚大な影響が出ています。
しかし、不動産価格の値崩れはまだ起きていません。この理由や、起きるとしたらいつ頃になるのかについて考察していきます。
出典:不動産経済研究所
こちらの表を見ると緊急事態宣言下ではマンション価格はほぼ変わっていないものの、発売戸数が大幅に減少していることが分かります。具体的には最大で5月は約80%減になっています。しかし緊急事態宣言が解除されてからはすぐに発売戸数が回復していることを見ると、単にマンションを販売する窓口の一時休業や物件内見ができなかったことにより契約が進まなかったことが原因であることが分かります。
つまり、コロナ影響下でもマンション需要はほぼ変わらず、そのために価格が変わっていないと言えるでしょう。
しかし、昨年のマンションの発売戸数平均は2603/月であり、それを比べると発売戸数が落ち込んでいます。これは販売窓口の休業やマンションの見学がしにくくなったことで買い控えている人が一定数いるという理由もあると思われますが、大きな投資や出費を心理的にしにくいという方がいることも確かでしょう。
4,5月の緊急事態宣言下で新築マンションの㎡単価が1割ほど上がっている理由ですが、この期間に発売戸数が減り、低価格帯の新築マンションの発売戸数が減ったため全体の㎡単価が上がったと思われます。つまり、緊急事態宣言下の東京においては、平均約6,000万円以下の新築マンションは売れづらくなり、約6,000万円以上の新築マンションは変わらず売れる傾向があることが分かります。また緊急事態宣言が起きた場合には参考になるかと思いますが、数か月の一時的現象のためそれほど気にする必要はありません。
出典:国土交通省「地価公示」
今回の経済危機はリーマンショック級もしくはそれ以上になると言われることが多く、経済への影響もリーマンショックの時の変化を振り返ることにより推測しやすい部分もあります。その通りになる訳ではありませんが、過去の経済危機の時にどのような変化があったのか見ていきましょう。
過去の大きな経済危機として1990年代のバブル崩壊と2008年から起きたリーマンショックを参考に見ていきます。
バブル崩壊の期間の地価は5年間で平均して約20%ほど下がっていて大きな下落と言えるのですが、その前の1986年~1989年の乱高下のほうが大きな変化となっています。時系列順にきちんと数字の変化を見るとこの乱高下があったからこそバブル崩壊が起きたということが分かります。バブル崩壊の期間中にも地価は下がってはいますが、バブル崩壊があったから地価が大きく下落したというよりかは、1986年~1989年の地価の乱高下があったからバブル崩壊が起き、その後の地価減少に影響を与えていると言えます。今回のコロナ危機とは性質が大きくことなるので参考にはしないほうが賢明です。
リーマンショックの時の地価を見ると期間中に約15%下がっており、その後現在までじわじわと回復していることが読み取れます。もし今回のコロナ危機をリーマンショック級と仮定すると2021年~2022年の間に地価が約15%ほど下がると思われます。
出典:不動産経済研究所
次に不動産価格についてみていきましょう。バブル崩壊時のマンション価格下落については2章に書いた通り参考になりにくいため、リーマンショック時の変化を見ていきましょう。
グラフから読み取れることはリーマンショックが起きた期間に僅かな下落は見られるものの、マンション価格にはさほど影響がないということです。2002年からずっと上昇基調であり、長い期間でみるとリーマンショックが起きてから4年間はマンション価格は停滞していたということが読み取れます。また、供給戸数に関しては期間中に少し下がっていることが分かります。
1章で示した現在のマンション価格も昨年と同水準であり、供給戸数が下がっている点が共通しており、リーマンショック時の変化がコロナ影響下でも起きる可能性が高いということが推測されます。
推測通りになるとすれば、2020年~2023年の4年間は不動産価格が停滞し、その後回復に向かい、供給戸数は2021年もしくは2022年から元に戻ることになります。
一方アメリカではリーマンショックの時に各都市の不動産価格が大暴落しました。都市により大きな差はありますが、最大で以前の半分の価格まで不動産価格が下落した都市もあり、その時に購入した投資家が大きな利益を上げています。その後は日本と同じく約4年の停滞期を迎え、その後回復に向かいました。
今回も同じように不動産価格が大暴落する可能性がありますが、今のところその予兆は見られません。
むしろ都市によってはコロナ前より物件価格が上がっているところもあるぐらいです。
商業施設と住居物件では大きく状況が異なることには気を付けないといけません。暴落が始まるとすれば商業物件のほうになります。
暴落がまだ起こっていない理由としては、リモートワークの推進により住居としての需要が高まっていること、政府による大規模な金融緩和が続いていることがあると思われます。
過去の経済危機から推測するとマンション価格はこれかれ3,4年は下落はしないものの停滞する可能性があること、供給戸数は1,2年間は下落し、その後すぐ回復する可能性が高いことが分かります。
不動産価格が大きく下げる局面があれば、絶好の買い時となりますが、今のところ大きく下がる予兆はありません。
リーマンショックとコロナが経済に与える影響は似ていますが、内容は大きく異なります。リーマンショックの時には金融システムの崩壊が起きましたが、今のコロナ下ではまだ金融システムの崩壊は起きていません。感染症対策で自宅にいる時間が長くなれば住居用であるマンションの需要は高いままになるでしょう。
アメリカの不動産価格は2021年にリーマンショックの時のように大幅に下落する可能性もありますが、日本には影響しない可能性のほうが高いので物件を持っている方は焦って売らないように冷静に判断することをお勧めします。