低金利時代が続く中、投資信託、株式投資、FX、不動産投資など、投資に対する関心が高まっています。この中でも、不動産投資はある程度の資産を保有している人にとっては、空室リスクを回避し、高利回りの物件での賃貸経営をすることが出来れば、ローン完済後も安定して収入を得られるので、魅力的な投資対象となっています。今回は、「不動産投資でなぜ住宅ローンを設定できないのか」の理由についてメインに解説致します。又、不動産投資でローンを組む際に、住宅ローンでも組めるケースや、注意していただきたいポイントなどを併せてご紹介させていただきます。
1.投資用不動産に住宅ローンを設定してしまった事例
2.投資用不動産に住宅ローンを設定しようとする理由とできない理由
3.投資用不動産に住宅ローンを設定したことが発覚する場合
4.条件を満たせば投資用不動産でも住宅ローンが認められる場合
5.住宅ローンと不動産投資用ローンの併用は可能か?
6.オーナーチェンジ物件の場合は、住宅ローンの設定はできるか?
7.まとめ
2018年には、投資用不動産に「フラット35」を活用して、それが発覚して契約違反になった事例が多発しました。フラット35とは、本人もしくは親族の住居用物件の購入しか利用できない住宅金融支援機構が、低金利で融資する制度で、投資用不動産は対象外となっています。不動産業者によっては、口車に載せて、オーナーに契約を結ばせてしまうケースも見受けられ、発覚した結果、ローンの一括返済を迫られ、自己破産に陥ってしまったケースもあります。
この為、疑問点や分からない点は、金融機関に相談するようにしましょう。契約してしまってからでは遅いので、契約前に必ず相談することをオススメします。
2. 投資用不動産に住宅ローンを設定しようとする理由とできない理由
では、なぜ投資用不動産に住宅ローンを設定しようとするのかについての理由について、みてみましょう。又、できない理由も併せて解説致します。
そもそも、住宅ローンは、低金利及び税制優遇措置が採られているので、減税の対象となっています。低金利の理由は、住宅ローンを組む対象者は、本人もしくは親族である場合が多く、居住用物件に利用されるものとなっています。その為、住宅は必要不可欠なものと判断される為、様々な属性の人でも購入できるように、金利が低く設定されています。一方、不動産投資ローンは、事業用のローンの一種であり、原資の返済が滞る可能性があります。その為、金融機関は毎月の決まった回収額に、金利を高く設定することで、早期に債権を回収できるようにしています。又、リスクが大きい為、回収できる金額を最終的には多めにしていると言えます。その為、不動産投資には、低金利の住宅ローンは適用外となります。
又、税制優遇措置に関しても、政府としては、様々な属性の人でも住居を確保できるようにしてほしいという観点と、不動産業界が安定して伸びていってほしいという狙いがあり、双方の需給を活発化させる為に、税制優遇措置を採用し、減税とすることで、金融機関が融資しやすいように支援しています。それが税制優遇措置での融資という形で表れており、金融機関の融資が受けやすいように政府が補助していると考えられています。一方、不動産投資のローンに関しては、先述の通り、賃貸経営という事業に対して融資することになるので、需給を活発化させるという本来の趣旨から逸脱する為、税制遊具措置を採っておらず、金融機関の判断に任せていると考えられています。この為、不動産投資には、税制優遇措置は適用外となります。
以上のことから、先述の事例のように、不動産投資を低金利と税制優遇措置が適用される住宅ローンで組みたいと思っているオーナーや不動産業者が、無理やり住宅ローンを設定しているケースが多発しています。住宅ローンがなぜ低金利なのか、又、税制優遇措置が採られているのかについて理由を抑えられていれば、これらの事例は回避できるので、まずはこの点を抑えましょう。では、次に、投資用不動産に住宅ローンを設定してしまったことが、発覚してしまうケースをみてみましょう。
郵便物が届かないケース
仮に投資用不動産を住宅ローンで組んだ場合、まず、郵便物が届かない為に、金融機関に発覚するケースが挙げられます。具体的には、住宅ローンを組んだ場合、その住所に本来居住するはずなので、住民票もその住所に変更します。一方、投資用不動産の場合は、そこに住むことがない場合、当然のことながら住民票は移転させません。その為、金融機関から送られてくる郵便物が、宛先不明で戻ってきてしまい、そこに疑問点を感じた金融機関によって調査されて発覚してしまうという流れになります。
銀行営業マンが急に訪問するケース
地方で多い傾向がありますが、金融機関からの営業による訪問で、投資用不動産に住宅ローンを設定していることが発覚するケースがあります。当然のことながら、訪問した先に本人が住んでいない為に、発覚してしまいます。
担当の不動産事業者に対する全件調査
担当の不動産事業者や、営業マン自体が率先して、住宅ローンの不正利用を行っているケースも考えられます。これがきっかけで、不正利用が発覚した場合は、この事業者が持つ物件については、全件調査となります。
これらの要因により、投資用不動産に住宅ローンを設定していることが発覚してしまった場合は、金融機関から一括返済を求められてしまいます。相当の理由(不動産業者に騙されて契約していたなど)がない限り、分割での住宅ローンの返済は認められないと言えるでしょう。又、例え一括返済できたとしても、その後、金融機関からの融資は厳しくなっていくものと言えます。その為、こういった事態に陥らない為にも、契約する前の段階で、しっかりと金融機関に確認及び相談をしましょう。又、投資用不動産のローンを組んで、健全な黒字経営を目指すように取り組みましょう。
4. 条件を満たせば投資用不動産でも住宅ローンが認められる場合
これまで、投資用不動産には住宅ローンを設定できない理由などや、発覚する事例などをみてきました。では次に、投資用不動産に住宅ローンを例外的に設定できるケースをみてみましょう。
賃貸併用住宅の場合
賃貸併用住宅の場合は、建築及び購入の際に住宅ローンの利用が可能です。なぜかというと、賃貸併用住宅は、自己の「居住用スペース」と第三者に貸し出す「賃貸スペース」が、1つの建物の中に共存するタイプの住宅のことを指します。つまり、賃貸併用住宅を投資用不動産として活用しつつ、自分も住むことになるので、安定したローンの返済が見込めるので、住宅ローンを組んでも問題ないと金融機関から判断され、住宅ローンを組むことが可能となります。
賃貸併用住宅として判断される為には、総面積の内、自己の居住用スペースが50%以上必要であるという条件があるので注意して下さい。
転勤などのやむを得ない場合
転勤などの止むを得ない場合で、住宅ローンで購入した物件を、一時的に他の入居者に貸し出し、家賃収入を得る不動産投資の形態へ変更する場合も、住宅ローンが継続して適用される可能性があります。
場合によっては、住宅ローンから不動産投資のローンに変更が必要になるので、金融機関に相談、確認することが必須となります。
では、住宅ローンと不動産投資用ローンの併用は可能かどうかについてみていきましょう。
住宅ローンを先に設定しており、後に不動産投資用ローンを設定する場合
例えば、年収600万円の場合で、住宅ローンが、2,000万円ある場合を考えてみましょう。投資用不動産に融資可能な額は、年収の約7~8倍と言われており、今回は7倍で計算してみます。
・不動産投資用ローン借入限度額=年収600万円×7=4,200万円
この借入限度額から、住宅ローンの2,000万円を差し引いた額が、不動産投資用ローンで借り入れることができる限度額となります。つまり、4,200万円から2,000万円を差し引いた2,200万円が、不動産投資用ローンとして、金融機関から借り入れられる限度額となります。
これはあくまで基本的な算出となり、物件の収益性や、担保価値によっても融資の額に幅が出るので、あくまでも参考程度に抑えておいていただければと思います。
では次に、不動産投資用ローンを先に組んでいて、住宅ローンを後に設定する場合をみてみましょう。
不動産投資用ローンを先に設定しており、後に住宅ローンを設定する場合
例えば、年収600万円の場合で、不動産投資用ローンをすでに組んでいる場合は、賃貸経営のキャッシュフローの状態によって、住宅ローンの借り入れ限度額も変わります。今回は、賃貸経営でキャッシュフローが100万円の黒字の場合と、100万円の赤字の場合でみてみましょう。こちらも、年収の7~8倍と言われており、今回は7倍で計算してみます。
・年間100万円の黒字の場合
(年収600万円+投資用不動産キャッシュフロー100万円)×7=4,900万円
・年間100万円の赤字の場合
(年収600万円-投資用不動産キャッシュフロー100万円)×7=3,500万円
100万円の黒字の場合は、住宅ローンの設定限度額が4,900万円、年間赤字の場合は、3,500万円まで借り入れ可能となっています。又、不動産投資のローンに残債がある場合は、それも併せて差し引かれることになるので、実際には、住宅ローンを先に設定した場合とあまり変化はないと言えます。いずれにしても、キャッシュフローが黒字になっていれば、その分、借入限度額も大きくなると言えます。
6. オーナーチェンジ物件の場合は、住宅ローンの設定はできるか?
オーナチェンジ物件には、住宅ローンを設定することが出来ません。なぜかというと、オーナーチェンジ物件は、すでに住んでいる人がいる状態で売買される物件の為、入居者の契約はそのままで、オーナーだけが変更することになります。その為、投資用不動産であることに変わりはないので、住宅ローンの設定をすることは出来ません。
しかし、オーナーチェンジする物件に住もうと思っている場合で、賃貸併用住宅として活用する場合は、先述の通り、住宅ローンの設定が可能となります。この場合は契約前に、金融機関に住宅ローンの設定が可能かどうか確認することをオススメします。
これまでみてきましたように、基本的に投資用不動産に住宅ローンを設定することは出来ません。しかし、例外的に認められるケースもあるので、自分がどのスタンスで投資用不動産の経営を行うのかについて、今一度検討し、もし住宅ローンの設定が可能な場合は、金融機関に相談して、少しでも有益となるように不動産投資を行っていきましょう。