近年、不動産投資の周辺状況が一変してきています。具体的には、地価の下落、それに伴い建物の価値自体が変化しており、投資する建物の見極めがより重要となる一方で、金融庁からの引き締めによって、金融機関の審査がより一層厳格化されてきており、融資を受けにくくなってきていると言えます。その為、今後、サラリーマンが不動産投資を行うことが、本当に有効な投資なのかどうか、改めて検討するべき段階に入ってきていると言えますね。今回は、そんな変化の激しい不動産投資に関して、金融機関から融資を受けやすい属性などをご紹介しつつ、コロナ渦の影響で、今後どのような変化が起きるのか、併せてご紹介させていただきます。
一般的に、個人事業主や会社経営者よりも、サラリーマンは融資審査に通りやすくなっています。「安定した収入」があることが最大の理由と言えるでしょう。さらに、公務員であれば、地方自治体や国が破綻することはまずないので、さらに融資を受けやすくなっていると言えます。これらの為、安定した収入が見込めるサラリーマンは、資金不足に陥るリスクが少なく、継続して賃貸経営が行えると金融機関から評価されるので、融資は受けやすい傾向になっています。
では、次に、金融機関からの融資の際に審査の基準となる属性について、みてみましょう。
金融機関から融資を受ける際に、いくつかの属性が、融資審査結果や、有利な融資条件を受ける際に重要となってきます。主に、年収、勤務先、年齢、勤続年数、その他となっていますので、1つ1つみてみましょう。
年収
ローンの返済原資は「家賃」です。しかし、空室リスクや修繕などの費用に伴い、赤字経営になる可能性があります。この場合、個人の所得から赤字分を補填する必要があるので、返済の原資が多いことが重要な属性になると言えます。この為、年収が多ければ多い程、返済原資も多いと判断されるので、金融機関からの融資を受けやすいと言えます。又、融資を受けられる金融機関の幅も広がることになり、より融資が受けやすくなります。
金融機関の融資審査の傾向としては、融資金利が低いメガバンクや地銀では、より高い年収が求められることになり、ここでも融資が受けられない場合は、金利の高いノンバンクなどで、検討することになります。
勤務先
勤務先についても重要な属性となります。例としては、上場企業か中小企業かでも、融資審査結果や、融資条件が違ってきます。これは、万が一、会社が倒産してしまうと、返済契約者が返済困難になってしまい、金融機関が融資した債権を回収できなくなってしまうからです。その為、中小企業→非上場企業→大手上場企業の順で、より高い安定性があると判断される傾向が強くなっています。さらに、公務員であれば、より属性が評価されると言えるでしょう。
年齢
不動産投資ローンの場合、融資申込み可能な年齢の上限が明確に定められていません。これは不動産投資の返済原資が「家賃」であり、年齢に関わらず、家賃収入があれば返済できると判断される為です。
この為、不動産経営が赤字になった場合の補填を考えると、定年退職を間近に控えた年齢では、融資審査にマイナスを与える可能性が大きいと言えます。融資審査が通りやすい年齢としては、30代~50代が最も多いと言え、平均年齢は43歳となっています。又、その内60歳を超える投資家は2%程となっており、働き盛りの年齢で、不動産投資をした方が、金融機関からの評価も高く、有利な融資条件を引き出せたり、融資審査が通りやすかったりと、プラスに作用すると言えますね。
勤続年数
勤続年数が長ければ、長い程、金融機関から安定した収入を確保できているという評価がなされ、融資を受けやすくなります。この為、転職や独立を将来考えている場合は、不動産投資をするべきタイミングを再度考えておいた方が良いと言えます。しかし、転職をしてまだ間もないが、年収が高いなど、他の属性で高い評価を金融機関から得ることが出来れば、勤続年数が短いというマイナスの属性をカバーできるので、融資を受けられる可能性もあります。その為、勤続年数が短い場合は、他の属性でカバーできるかどうか、見直ししてみることをオススメします。
その他
その他の属性としては、以下の点が挙げられます。
・歩合給よりも、固定給の方が収入の安定性が高く評価される
・連帯保証人となる配偶者がいる方が高く評価される
・実家に住んでいて、家賃の支出がない方が評価は高い
これらのように、金融機関からの審査は多角的な視点から審査されます。審査基準としては、いかに返済の原資が確保できているか及び原資の減りが少ないか、という観点が重視されていると言えます。その為、少しでも融資が受けやすい属性があるかどうか、今一度見直してみることをオススメ致します。
元々金融機関から、不動産投資に関する融資を受けやすいと言えるサラリーマンですが、融資の際に、さらに属性を高められる可能性があるので、それらのポイントを1つ1つみてみましょう。
クレジットカードやカードローンの限度額を下げる
クレジットカードやカードローンの借り入れ、ショッピングをしていなくても利用枠が残っているだけで、審査に影響することがあります。その為、限度額を下げたり、使っていないクレジットカードがあれば解約したりすることで、少しでも属性を上げることが出来ます。
収入及び貯蓄を増やす
返済原資は、多ければ多い程、金融機関から高く評価されるので、属性を上げることが出来ます。今すぐに収入や貯蓄を増やすことが出来ない為、計画的に準備をする必要があります。これと同時に、転職や独立も併せて考えてみるのも良いかもしれませんね。
他の借り入れを整理する
利用している住宅ローンや、その他の不動産ローンがある場合は、借入を整理することで、属性を下げることが出来ます。
これらのポイントに共通するのは、返済原資をより多くし、より減少させないような取り組みと言えるので、他にも返済原資を継続的に増やしたり、減少幅を減らしたりする取り組みを継続的に行っていれば、その点を金融機関が評価して、結果として属性のポイントを上げることに繋がります。その為、少しでも属性を上げられると思った取り組みは、継続して行っていきましょう。
各金融機関の融資条件の変化
中国武漢で発生した新型コロナウイルスの影響により、日本でも一時期緊急事態宣言が発令されるなど、影響が深刻化しており、当初の想定を超えて感染が拡大しています。その為、2020年10月現在においても、収束する目途が立っておらず、依然として不透明な状況となっています。これらの影響により、飲食、エンタメ、航空業界を中心に、企業の倒産、休業及び廃業がかつてない程のスピードで進行しており、地価価格や建物価格などの不動産価格にも何らかの影響があると推測されています。
この影響により、金融機関の審査にも関連して影響が出てくるものと推測出来、これまで融資の際に評価されてきた属性に関しても、変化が生じるものと言えそうです。例えば、大手アミューズメント施設に就業していた場合、売上高の大幅な減少により、企業価値も下落します。その為、そこに就業している場合、融資の審査が通りにくいといったケースも容易に考えられ、収束するまで、ある程度、金融機関から話を聴いたりするなど、情報収集が欠かせない状況になってきていると言えそうです。
不動産投資からの撤退の可能性
コロナウイルスが与えたマイナス影響の第1位として挙げられたのが、「物件に係る収入源」となっており、今後経営難により、物件を売却したり、不動産投資から撤退したりする大家さんが増えていく可能性が考えられます。その為、今後のコロナウイルスの収束をある程度見込みながら、不動産投資自体の動向も、より注視していく必要があると言えます。
競売物件の増加
コロナウイルスの影響により、住宅ローンの返済が滞っている債務者が続出していると考えられ、長期化すればするほど、物件を手放さざるをえない債務者が増加していくものと推測できます。政府による住居確保給付金の支給や、金融機関の融資審査基準の緩和などから分かるように、この問題に対して連携して対処している最中ですが、収束の目途が立たない為、今後、競売に出さざるをえなくなる債務者が出てきてしまうものと推測されています。
その為、コロナウイルスの流行が長期化すると、裁判所から入札することのできる物件数が増加していき、安値で良い物件が入手できる可能性が高くなっていくと推測出来、これを入札後、賃貸物件として投資用不動産にすることも出来ると言えます。しかし、競売物件に住宅ローンを設定する場合は、担保価値がないと判断する金融機関が多く、ローン審査は通常に比べ、より厳格化されており、原則融資はされない事となっています。
又、仮にローン審査を受けられたとしても、入札時に不動産業者を介していないため、修繕費などの原状回復費は自己負担となってしまうので、入札の前に徹底的にリサーチをする必要があります。
投資用不動産を探している方にとっては、割安な不動産が入手できるチャンスでもありますが、それなりにリスクと時間がかかることを考慮に入れておくべきだと言えますね。
これまでみてきましたように、基本的にサラリーマンは、安定した収入が見込めるので、金融機関のローン審査が通りやすい傾向となっています。又、自身の属性や、属性を上げるポイントに意識して取り組むことで、より金融機関からの審査に通りやすくなると言えます。コロナウイルスの影響で、不動産の価値や状況の変化が急速に進んでおり、外部環境が変わりつつあります。その為、外部環境に注視しながら、属性を地道に上げていく努力をしていき、コロナウイルス収束後に、不動産投資を本格的に行っていっても良いかもしれませんね。