基準地価は、例年、国土交通省により毎年9月中旬に発表されますが、今回はコロナウイルスの影響もあり、その発表が9月29日と遅くなりました。今回の地価価格の変動率は、7月1日を基準日としており、コロナウイルスの影響も加味されているので、注目に値する内容だったと言えます。今回発表の地価の変動率を抑えることが出来れば、今後の不動産投資も有効なものとなりえますね。では、内容をみてみましょう。
毎年9月に地価の変動率を発表
基準地価とは、例年7月1日を基準日としており、全国の都道府県が国土利用計画法に基づき、その基準日時点における1m²当たりの地価を判定するものです。発表は、毎年9月中旬となっています。
公示価格を補完する役割
対して、公示価格は国土交通省が、地価公示法に基づき実施するもので、基準日は例年1月1日となっています。例年、3月中旬頃の発表となっており、基準地価は、この公示価格を補完する役割を担っています。
主に3つの地価から成る
基準地価は、主に商業地、住宅地、工業地から成り、変動率を過去と比較することで、地価の増減を把握することが出来ます。例えば、2020年度のある地域の住宅地の地価が1.0、2019年度では0.5だったとすると、0.5%地価は上昇しているとみることが出来ます。
地域別基準地価の変動
住宅地と商業地の比較(2020年9月発表分)
参考:国土交通省HP
2020年9月に発表された地価の全国平均の全用途平均は、住宅地でマイナス0.7%と前年に比べマイナス0.6%と、マイナス幅が拡大しています。又、3大都市圏でも、住宅地はマイナス3%と8年ぶりに減少に転じ、商業地はプラスを維持しましたが、これまでの上昇率が大幅に減少しています。3大都市圏の中でも特に名古屋は、住宅地、商業地ともにマイナスとなっています。
一方、地方4市は、住宅地及び商業地の変動率は、上昇を維持しています。ただ、上昇率の伸びは減少しています。又、地方4市を除いた地方は、住宅地及び商業地双方ともにマイナスの変動率となっています。
マイナスに転じた要因とは?
地価の変動率が、全国的にみてマイナスの変動率を記録している理由は主に2つあると言えます。
・人口減の影響
・コロナウイルスの影響による雇用状況の悪化とテレワークの推進
もともと、日本は人口減少の段階に入っており、総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、2020年1月現在、日本の総人口は1憶2713万8033人となっており、前年から日本人のみに限ると50万5046人減少しています。これは、1968年の現業の調査開始以来、過去最大の減少幅となっており、今後も、少子化及び経済の低迷により、人口減少は続いていくものと推測されています。
その為、そもそも人口が減少し始めている日本において、地方から都心への人口集中が続いており、地方の過疎化が問題となっていました。この傾向が今後もある程度続いていくものと推測されています。
*参考URL国土技術研究センター: http://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary05
次に、コロナウイルスの影響により、人の移動が制限されてしまい、経済が停滞し始めています。その為、企業の業績も悪化しており、政府の金融支援により倒産件数は抑えられていますが、休廃業・解散している企業の件数は、2020年1月~8月にかけて、3万8516件(前年同期比23.9%増)となっており、支援を待たず事業を撤退する企業が増加しており、2000年の調査開始以来、過去最多となることが確実視されています。
この為、事業で活用していた不動産を手放す可能性が考えられ、商業地の地価の変動率は、今後も減少していく可能性が高いと推測できます。
*参考URL東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200923_01.html
又、テレワークの推進により、首都圏から通勤して会社に通うというこれまでの就業スタイルの見直しがされ始めています。この為、IT関連企業などを中心に、テレワークが推進され始めており、地方に移住する人も増加してきています。この為、これまで転入超過であった東京の人口は、1956年の調査以来、初めて6月の人口が前月比で減少に転じており、5月に到達した1400万人を割り込みました。最新の9月の統計によると、1,398万1,782人となっており、前月に比べ1万1,939人減少しています。
東京圏の地価下落率ランキング
では、これらを踏まえた上で、最新の地価下落率ランキングをみてみましょう。
1 |
東京都日野市平山6丁目 |
▲18.4 |
2 |
東京都日野市南平2丁目 |
▲7.9 |
3 |
神奈川県三浦市尾上町 |
▲7.3 |
4 |
神奈川県横須賀市湘南鷹取4丁目 |
▲6.9 |
5 |
神奈川県横須賀市武5丁目 |
▲6.7 |
令和2年の東京圏の下落率ランキングでは、東京が下落率の1位と2位に入っており、これは、過去9年間で1度もありませんでした。これは、日野市が「土砂災害警戒区域」に指定されたことが、下落した理由となっています。こういった自然災害の被害を受けやすい地域の土地が下がっているので、要注意と言えます。又、先述の通り、人口減とテレワークが可能になっていく時代となりつつある為、減少幅に拍車をかけているものと推測出来ます。
これらの為、首都圏での不動産投資は、多角的にみていく必要があると言えます。では、次に、商業地の上昇率ランキングをみてみましょう。
東京圏の基準地価ランキング
1 |
東京都中央区銀座2-6-7 |
41,000,000円 |
2 |
東京都中央区銀座6-8-3 |
30,700,000円 |
3 |
東京都千代田区丸の内3-3-1 |
27,300,000円 |
4 |
東京都港区北青山3-5-30 |
27,000,000円 |
5 |
東京都千代田区大手町1-8-1 |
26,100,000円 |
全国地価最高額は、東京銀座の明治屋銀座ビルですが、変動率が▲5.1%となっており、9年ぶりにマイナスとなっています。今後この基準地価のランキングも変動していくことが推測されており、銀座の基準地価は、東京圏の地価全体の1つの目安となりうるので、注目するべき地価基準と言えます。では、次に商業地の基準地価ランキングをみてみましょう。
商業地の上昇率ランキング
1 |
沖縄県宮古島市平良字西里根間246番 |
38.9% |
2 |
沖縄県那覇市前島2丁目11番5 |
34.8% |
3 |
北海道虹田郡倶知安町北西2丁目18番 |
32.0% |
4 |
長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020番 |
30.3% |
5 |
沖縄県宮古島市平良字西里出口556番 |
30.2% |
商業地の上昇率では、前年度1位の北海道では、約66%超の上昇率でしたが、今年度の上昇率の第1位である沖縄県宮古島では、38.9%と、前年度に比べ開きがあります。今後もコロナウイルスの影響などを鑑みると、上昇率の伸びは期待しにくい状況となっています。
参考URL HOME4U:https://www.home4u.jp/sell/juku/hotnews/56-8644
これまでみてきましたように、地価の変動が様々な要因で下落傾向となっています。その為、入居ニーズを見極めた不動産投資が必要と言えます。では、良いか悪いかの判断するポイントを以下にまとめてみましたので、みてみましょう。
・人口が増加している地域かどうか
・災害が少ない地域かどうか
・人口密集地域かどうか
この3点が今後、良い地域かどうかの判断ポイントになると言えます。人口が増加している地域かどうかは、各自治体のHPなどにも掲載されているので、容易に確認することが出来ます。
又、災害が多い地域かどうかは、国土交通省がハザードマップとして、ネット上で情報を公開しています。その為、こういった公的機関の情報を精査してみることをオススメします。
地価変動率を表でみてきましたように、地方4市は、その伸び率は減少していますが、上昇率のプラスは維持しています。郊外に出れば、人口が密集していない地域が多いものと推測でき、地方4市などの中核地域の価値は上がっていく可能性が高いと言えます。その為、こういった地方の中核都市は今後も地価の上昇傾向は続いていくものと言えます。
これらのポイントを考慮して、有効な不動産投資を行っていきましょう。
地価に限らずコロナウイルスの影響は、これまでの社会生活そのものを変えるインパクトを持っていると言われています。又、これまで変化する必要がありながら、長年放置されてきた問題、例えば環境問題、東京一極集中の問題などを露呈させ、強制的に解決しなければならなくなっている状況に進展しつつあると言えます。その為、投資する際も、これまでの統計データがあまり基準とならない可能性があります。統計データを考慮しつつ、今後の展開をある程度見据えた上で、投資を行っていった方が良いのかもしれませんね。