不動産投資は、株式投資、FXなど他の投資と比べると、良い物件で運用することが出来れば、家賃収入を定期的に得られることになり、手堅い投資だと言えます。又、資産価値がある不動産であれば、通貨価値が下がったとしても、その資産価値は守られ為、インフレ対策にも有効となっています。その為、ある程度資産を保有している方は、不動産投資は魅力的な投資先となっています。この不動産を競売で安く購入することが出来れば、早い段階で、家賃収入がそのまま利益になる状況を作り出せると言えます。今回は、この競売物件に関するポイントを3つご紹介させていただきます。リスクを把握した上で、上手な不動産投資を行いましょう。
1.競売物件とは?
2.競売物件に潜む3つの罠① 物件の管理状態が悪い
3.競売物件に潜む3つの罠② 担保としての価値が低い
4.競売物件に潜む3つの罠③ 住民が居座っていることがある
5.まとめ
競売物件の概要
競売物件とは、債務者の支払い能力がなくなってしまい、銀行などの債権者が抵当権を行使して差し押さえた物件で、裁判所を通して競売にかけられている物件のことを意味しています。その為、債権者側としては、債務者から債権を早期に現金化して回収したいという思惑があり、通常の相場よりも、比較的安く売られています。その為、競売物件は、初期の費用を抑えて、不動産投資を行いたい方には適している物件だと言えます。
競売物件の特徴
通常の不動産取得の流れでは、不動産業者が仲介した不動産を購入する為、購入者の権利は宅地建物取引法で守られています。つまり、不動産取得後に、建物に不具合があった場合、売主に対して、瑕疵担保責任を問うことが出来、修繕費などを請求することが出来ます。
対して競売物件を落札した場合、売主がいない為、物件取得後、もし建物に不具合があっても、瑕疵担保責任を問うことが出来ません。その為、修繕費などの費用は、自分で支払わなければいけません。
これらの為、競売物件は、比較的安く物件を取得することができる反面、取得後の対応は自分でお金の面も含めて対応しなければならないという点に留意しましょう。これらを踏まえた上で、抑えておくべき3つのポイントをご紹介致します。
原状回復義務がなく、情報源が限られている
先述の通り、競売物件は、債務者の支払い能力がなくなった為、金融機関などが債権を回収する為に、裁判所経由で競売にかけている物件です。その為、債務者が該当の物件の管理を怠っている可能性があり、管理状態が著しく悪い物件も数多くあります。つまり、賃貸借契約における原状回復義務が発生しおらず、不動産の不具合がそのままとなってしまっています。しかし、賃貸借契約における「引き渡し」という概念が存在しない為、物件の内見が出来ず、競売で取得した物件の状態を、事前に把握することが出来ません。
又、こういった特徴がある為、事前に得られる情報が少なくなっています。得られる情報としては、裁判所が用意した以下の情報のみとなっています。
・現況調査報告書
・評価書
・物件明細書
これらの情報のみしか与えられず、競売物件の情報は基本的に限られているものしか閲覧することができないと言えます。
では、この罠を抑えておかないと、実際にどういったことになるのか事例を通してみてみましょう。
事例Aさんのケース
Aさんは、比較的割安で不動産を取得できる競売物件で、繁華街近くの都内2DKマンションを2,000万円で購入することが出来ました。相場は2,800万円程となっており、かなり安い買い物でした。賃貸で月15万円程の家賃収入が期待できましたが、室内を見ると、返済が滞った人が住んでいた為、残留物や溜め込んだゴミが山積していました。この不用品の処分費用と、リフォーム代で500万円程かかってしまいました。さらに、前所有者の滞納していた管理費などの支払いも必要なことが判明した為、競売物件で、安く物件を買った意味がなくなってしまいました。
抑えるべきポイント
競売物件は、上記のような性質を持っているので、取得しようと思っている物件の周辺状況、外観などは事前に調べておきましょう。不動産の管理状態が著しく悪ければ、外壁などの状態からも、その兆候を知ることが出来るので、事前情報を鵜呑みにせずに、取得したい物件に足を運んでみても良いかもしれませんね。
原則、金融機関から融資はされない
競売物件は、債権者が債権を回収したいために、裁判所を通して競売にかけられています。こういった経緯がある為、何らかの問題のある物件とみなされ、担保価値が低いと評価される傾向にあります。つまり、原則、金融機関からの融資がされない傾向があります。つまり、ローンの審査が通りにくく、又、仮に通ったとしても金利が高いという悪い条件でローンを組まされる可能性があります。その為、以下の手続きを行った上で、事前に住宅ローンの融資に関して、金融機関から内諾を得ておく必要があります。
民事執行法82条2項について
同法は、競売不動産を担保とした買受人の為のローン制度で、一般の不動産売買で通常行われる所有権の移転と担保権設定が、競売不動産を買い受ける時にでもできるようにした法律です。
通常の流れだと、所有権の移転と担保権の設定は、2~3日のタイムラグが発生してしまい、それが理由で、結果として、銀行から融資をしてもらえなくなってしまいます。しかし、同法を活用することで、司法書士を通すことでこのタイムラグを失くし、金融機関からの融資を受けやすくすることが出来ます。
同法の活用の注意点
同法は、金融機関からの融資ありきの話なので、最終的に融資が下りないとなった時に、支払った保証金だけ裁判所にもっていかれてしまう可能性があります。その為、同法を活用する旨を、融資してもらいたい銀行に話した上で、融資の確約をもらうようにしましょう。
4. 競売物件に潜む3つの罠③ 住民が居座っていることがある
占有者が居座っている可能性がある
競売物件を落札されてからも、所有権が移転しているにも関わらず、該当の不動産を占有している場合があります。債務者未だ住んでいる可能性があり、こういった事態に対しても、競売物件を取得した場合は、対応しなければなりません。これは法律上、債務者保護の傾向が強い為でもあり、仮にそういった場合に直面した場合は、強制執行などの手続きが必要となるなど、手間がかかってしまいます。
探偵事務所や興信所に事前に調査してもらえる
先述の通り、実際に足を運んで該当の物件を調査することが必要と言えるでしょう。又、興信所や探偵事務所などでは、競売物件を事前に調査してくれるサービスを提供してもらえるところもあります。主に落札の前後に必要となる事項、前所有者の情報、占有者の有無、占有者との立ち退き交渉、建物の老朽化、事故物件(殺人・自殺の有無)、都市計画法の規制に基づき、建物の増改築・新築が可能かどうかなど、1人では対応が難しい事柄に対して、手厚くサポートしてくれます。競売物件の価格があまりにも安い場合は、同サービスを活用し、なぜ大幅に安いのかなどの根拠を把握し、適正価格かどうか納得した上で、該当の競売物件を落札するようにしましょう。
2019年の競売物件のデータについて
では、これらの競売物件の罠に注意しつつ、現在の競売物件のデータをみてみましょう。一般社団法人不動産競売流通協会によると、2019年の競売物件に関するデータは以下のようになっています。
・競売物件数
東京1,521件で全国トップの競売物件数となっています。他に、神奈川で1,413件、埼玉で1,270件、千葉で1,100件となっており、首都圏の競売物件数が全国トップクラスの競売物件数となっています。
・競売物件の内訳
マンションが4,151件(17%)、戸建て住宅15,498(64%)、農地1,293件、土地3,064件となっており、競売物件にかけられている物件の中でも、戸建て住宅が多い傾向となっています。
・落札率
落札率は、58.3%となっており、競売物件にかけられている物件の内、約6割が入札されているのが現状となっています。
・落札者属性
法人が10,576件、個人が3,512件となっており、法人の競売物件取得数が個人よりも約3倍多い傾向にあります。
2019年のデータから、競売物件に関しては、首都圏の物件数が多く、中でも戸建て住宅の物件数が多いことが分かります。又、法人の入札が個人よりも多く、約60%の確率で入札されています。売却基準価額は、2,303万円となっており、ここから2割の申し込み金が初期費用としてかかります。その為、平均の申し込み金額は、約400万円となり、大体これくらいの初期費用がかかるものと言えます。
2020年以降は、新型コロナウイルスの影響により、競売物件数は増加してくものと推測されています。その為、首都圏の競売物件数は、現在のデータよりも増加していくと考えられます。法人との競合になる可能性も高いですが、下調べしておく価値はあると言えそうですね。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、物件を手放さなければならない債務者が増加していくものと推測されています。その為、年末ごろの競売物件数の増加が推測されており、良い物件も増加していくものと言えます。又、テレワークが可能となったことで、首都圏に住む必要がないと判断する人が、若者を中心に出てきており、首都圏自体の不動産価格に何らかの影響が出てくるものと推測されています。
又、今後は、金融市場の低迷に伴う、インフレの懸念が指摘されており、インフレ対策として不動産を取得することも有効な手段と評価されつつあります。その為、競売物件で割安な不動産を取得することが出来れば、今後の投資及びインフレ対策として、1つの有効な手段になると言えます。
こういった不動産需要そのものの変化や金融市場の動向に留意しつつ、競売物件で安く物件を取得し、有益な不動産投資を行っていきましょう。