2020年に発生した新型ウイルスの感染拡大は全人類の予想を遥かに超え、2020年8月現在でも拡大を続けている。この影響は計り知れないものであり、様々な分野で影響を及ぼしています。その一つとして、リモートワークの普及があります。
不動産投資家にとってリモートワーク推進による地方への移住が発生するのかという点は最大限注目するべき事であるため、今回考察させて頂きます。
1.リモートワークの普及率
2.リモートワークに対する意識調査
4.リモートワークによって都心から地方への移住は進むのか
1. リモートワークの普及率
まずリモートワークが現在どの程度普及しているのか見ていきましょう。
以下のグラフに分かりやすくまとめられています。
参照:東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」
調査結果
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367
調査によるとリモートワークの普及率は緊急事態宣言発令前と比べて41.3%増加し、67.3%となりました。また、実施を検討している企業も増加し、9.7%となっています。
今まではあまり一般的ではなかったリモートワークが、緊急事態宣言発令を機に急速に拡大したことが分かります。
東京では電車の乗車率が一気に下がったことなどから見ても実感できます。
ただし、緊急事態宣言の期間が終了した後はリモートワークが終了した企業も多数あり、変化が激しい面もあるので、リモートワークの実施率に関しては注意する必要があります。理由としては日々の感染者数自体がかなり不安定なため、それによって国の対応も随時変わっており、それに合わせてリモートワークを実施するかどうか決めている企業が多いためです。
また、以下の表から全国規模でみると東京が他県と比べて圧倒的に普及率が高いことが分かります。
*表は4月時点のデータのため、ご注意ください。
参照:パーソル総合研究所「 都道府県別・テレワーク実施率ランキング」
調査結果
https://rc.persol-group.co.jp/news/files/news-data.pdf
こちらの表からは東京をはじめとして、神奈川、千葉、埼玉と首都の一都三県で1~4位まで占めているということです。
やはり人口が過密な地域や感染者数が実際に多い地域ほど、感染拡大のリスクを考えてリモートワークが導入されていることが分かります。
2. リモートワークに対する意識調査
まずはオフィスで働く人々がリモートワークをしたいと思っているのかどうかについて調べてみました。
その際にリモートワークを導入している企業としていない企業でかなり結果が変わるという面白いデータを見つけましたので以下ご覧ください。
参照:Biz Clip調査レポート
https://www.bizclip.jp/articles/bcl00014-022.html
こちら2つのグラフによると
リモートワークの障壁についてリモートワークを導入している企業では、「リモートワークを利用したい、または利用したい」と回答された割合が86.2%なのに対して、リモートワークを導入していない企業では「リモートワークを利用したい」と回答された割合が31.2%ということです。
その差は約55%です。
このデータは非常に大きな意味を示唆している可能性あります。
それは会社がリモートワークを導入して強制的に実施する場合はそれに従っているが、実際にはリモートワークをしたくないと思っている社員が最大で55%いるということです。
もちろん、平日毎日のフルリモートワークなのか、週1,2回や一部時間帯だけのリモートワークなのか等、程度には寄るところはありますが、リモートワークに積極的ではない方が多いという点には注目するべきでしょう。
次にリモートワークの妨げになっている事について以下グラフで確認しましょう。
参照:Biz Clip調査レポート
https://www.bizclip.jp/articles/bcl00014-022.html
上位に挙がっているのは、オフィスと自宅のネットワーク、通信、IT機器の差、セキュリティ面、人事評価、コミュニケーションでした。
当然と言えば当然のことですが、ほんどのオフィスには安定したWIFIやパソコンがありますが、自宅にはなかったり、パソコンの持ち帰りはセキュリティや不正利用防止の面で多くの企業で禁止されています。
働いた分を人事評価として正しく評価しにくかったり、密なコミュニケーションがとりづらいという点も理由となっていることが分かります。
こういった点を考えると通勤せずに自宅で気兼ねなく仕事できるという単純な問題ではなく、オフィスと自宅だと環境が大きく異なるという点が簡単に解決できることではないことが分かります。
オフィスで働く事が多くの企業では合理的であると再認識された形となりました。
3. リモートワークによって都心から地方への移住は進むのか
リモートワークの普及率や意識調査から考えると普及自体は急速に拡大したが、まだ多くの会社員はリモートワークに消極的であり今まで通りオフィスで働きたいと思っている方が過半数を占めていることが分かります。
リモートワークを一部導入していても、平日毎日フルリモートで働ける環境にはなっていない企業が大半ということでしょう。
このことから考えられるのは、リモートワークが普及したからといっても、オフィス自体は必要であり、出勤の必要性が一切なくなるという状況にはなりづらいということです。
今後、ITが更に進歩し、自宅にいながらでもオフィスにいる時と同等の環境を比較的簡単かつ低価格で構築できるようになればオフィス自体が不要となり、「通勤」という行為がなくなるかもしれません。しかし、そうなるにはまだまだ数十年はかかるでしょう。
都心のマンションに関してはワンルーム・ファミリー向けともに需要が減る可能性は低いと思われます。
東京という日本全体で見ればかなり狭い空間の中にビジネス、エンタメが集約されており、その付加価値は今後20~30年は少なくとも変わらないからです。
また、以前コラムで書かせて頂きましたが都心のワンルームマンションに関しては今後20~30年はじわじわと需要が高まってくると思われます。
こちらの記事ご参照ください。
つまり、頻度は減るとして通勤はこの先数十年はなくならないという意味でオフィスから通勤圏外への移住は現実的に難しいということが分かります。
通勤の頻度が減るということで多少遠い家になっても許容できる方はもちろん増えることが予想されるため、今まで売れにくかった郊外のマンションや戸建て住宅は多少売れやすくなると想定されます。