2020年8月現在、新型コロナウイルスが流行してから既に半年以上が経ちました。日本で見ても世界的に見てもまだまだ収束の見込みはなく余談を許さない状況です。
この間にマンション価値に与える影響について分かってきたことをまとめさせて頂きました。また、できる対策や考え方についても言及しております。投資の方向性を決める際の判断基準としてご参考頂けると幸いです。
今回の新型コロナウイルスが収束しても10年後にはまた新しいパンデミックが起きているかもしれません。そのため、マンション価値にどういう影響を与えるのかを知っておくことは1つの備えになるのです。
1. コロナがマンション価値に与える影響
マンション価値の決まり方
そもそも、マンションの価値とはどういった内容なのでしょうか。マンションの価値は、一般的に土地(立地)として評価される部分と、その上に立っている建物の区分所有がどのようになっているか、という部分で総合的に判断されることになります。マンションの価値としては土地(立地)の価値と、建物の価値の両方が重要だ、ということに他なりません。
分かりやすい例をご紹介しましょう。
例えば東京23区内の中でも、特に地価の高いエリアに立っているマンションは、たとえその区分所有の平米数が必ずしも大きいというわけではなくとも莫大な資産価値があります。
これはひとえに東京23区内の土地の価値が非常に高いことから、このような資産価値となるわけです。しかし、これが北海道という「非常に広大な土地を持つエリア」の、さらに地方都市になるとどうでしょうか?
東京23区内と比べて人口も圧倒的に差がついてしまいますし、そのエリアに居住を希望する人の全体的な数としても、やはりかなりの差がつくことが想定されます。つまり、そこに価値の差が生じるというわけです。
このように全く同じ条件で物件があったとしても、資産価値は東京の資産価値と比べるとかなり低くなることが想定されます。これは同条件の物件でも、そのエリアの土地の価格が北海道という広大な土地の分、安くなることが想定されるからです。それ以外にも様々な要素で立地の評価は決まるわけですが、このように例えると、理解が早いのではないでしょうか。
このように、マンションの価値は土地(立地)と、そして区分所有の価値によって総合的に決定されます。
コロナの影響
前項のマンション価値の決まり方に加え、コロナによりマンション価値が変動することになります。ただし、コロナの収束とともにマンション価値は戻るため、1,2年以内の売却を考えていない場合はさほど心配しなくてもいいでしょう。
基本的には下がる影響がほとんどですが、病院やその周辺のスーパー・コンビニなどは例外的に価値が上がることもあります。稀なケースのため今回は省きます。
大きく考えられる事として、2つの現象が起きます。
1.景気の悪化により家賃の滞納者が増える。
家賃が滞納されると投資家のキャッシュフローに直接的な影響があります。
家賃収入をそのまま投資物件の住宅ローン返済に充てているケースが多いため、家賃収入が途絶えると住宅ローン返済もいずれ厳しくなるのは必然でしょう。アメリカを筆頭に多数の家賃滞納者が2020年現在問題となっております。
管理会社による家賃保証がある場合は、家賃収入が途絶えても保証により住宅ローン返済の心配はありません。ただし、家賃保証に関しては契約内容によってはより少ない保証に見直しされる可能性もあるので、よく確認する必要があります。
業界業種によってはコロナの影響でほぼ無収入になる方も出てきますので、滞納者にはまず、仕事の状況を聞くようにしましょう。状況によって滞納が長引きそうなのか、解決に向かうのかある程度見極めができるでしょう。滞納が一ヶ月分だけでなく数か月分になり、半年以上続くようであれば退去してもらうように勧告することも現実的に視野にいれなければなりません。
このように家賃の滞納者がいない場合においても、全国的に滞納されるリスクが高い状態というのはマンション価値にマイナスの影響を与えます。マンション売却の際には価格が下がることも覚悟しなくてはいけません。
2.外出を控える人が増えることにより、物件の見学なども消極的になる人が増える。
マンションを購入しようとしている人が外出を自粛もしくは政府により禁止されることによって、見学ができず購入の検討を先送りにし、結局流れてしまうケースも多発します。
購入しようとしている熱が時間とともに冷めてしまうからです。物件を見学している時が一番購入する意欲が高い状態で、時間とともに冷めていくと考えていいでしょう。コロナが起きている数ヶ月のうちに、投資熱が冷めてしまうことは多々あります。
そして、重要な点ですが、不景気により物件を手放したい人は増えるのですが、見学ができないために購入したい人は逆に減ってしまうので、需要と供給に大きなギャップが発生します。
買い手が少ない場合でもすぐに売りたい売主は価格を大きく下げるため、相場が崩れる傾向にあります。コロナ収束後に価値が戻ると考えると、値崩れには限度があります。ある水準まで下がると下がりにくくなるでしょう。そのため、売却を考える方は不動産価格が値崩れしていないか随時チェックし、コロナの収束時期についても情報収集して見極めることが重要です。
2. マンション価値が上がる要素について
逆にマンション価値を向上させるものとしてはどのような要素が考えられるでしょうか。これはまず、土地の立地から考えれば良いでしょう。
例えば北海道の地方都市にマンションを買ったところで、その後その土地に多くの人が移住したり、人口が爆発的に増加するか、といえば疑問が残るケースもあるのではないでしょうか。
反対に東京23区内の中でも、毎年ネットやテレビ雑誌などで公表される「住みたい街ランキング」や「憧れの街ランキング」の上位に食い込んでくるようなエリアであれば、人口の増加も見込めますし、その土地が不人気になる、ということはほとんど考えなくても良いでしょう。23区内の中でも学生街として人気のエリアであれば、毎年継続的に人口の増加や入居者の発生も見込まれます。
そのため、ハイブランドな土地であればかなりの価値になることが想定されます。
言わずもがな、これは大きくその不動産物件の価値を引き上げます。
建物の部分についても、やはり「ブランド」という部分がその価値を引き上げてくれることでしょう。例えば有名なデザイナーが設計を担当したマンションや、ブランド力のあるデベロッパーが建設したマンションであれば、それだけでも安心感からある程度の価値が担保されることが予想されます。
3. マンションと一戸建ての資産価値の比較
ちなみにマンションと一戸建てでは、同条件で不動産物件を取得した場合、先にその資産価値が落ちるのはどちらでしょうか?
これは一概には言えないことでもありますが、一般的にマンションの方がどちらかというと長持ちしやすいという傾向にあります。なぜなら一戸建ての場合は、どうしても建築の年数・「築年数」がネックになってくることがあります。
また最近は災害なども多く発生していることから、大きな災害で被災したエリアの住宅はその資産価値が落ちてしまうことも十分に考えられます。このような要素も相まって、建築から一定以上の年数が経過すると、資産価値が落ちてしまうことが考えられます。建物の資産価値が落ちてしまうとなると、残るは土地の価値のみになってしまいます。
この辺りを考えると、マンションの方がどちらかと言うと資産価値が長持ちする傾向にあります。なぜなら、人気エリアのマンションであれば借り手が容易につくことが予想され、数年~数十年に一度はマンションの大規模な改修工事なども全体的に入ることが想定されるからです。
もちろん、災害の発生などによって損害が発生した場合は、建物全体、又はマンションの部屋にかけてある保険の部分でカバーできるケースもあります。ほとんどのケースでは投資物件として不動産を取得した際にこれらの保険に加入することになりますが、今一度、保証範囲などについても確認しておくとよいでしょう。
4. 投資家ができる対策
それでは、ここからは資産価値を落とさないために投資家が実践すべきことについてご紹介していきます。
基本的にパンデミックに対してはできることは多くはありません。売却を考えている方は収束した後に売ったほうがいいという事ぐらいになります。焦らずに収束するまでじっと待ちましょう。数は少ないですが、コロナによる不景気に合わせて家賃の減額をするオーナーもいますが、1,2年と長めに続く可能性もあるのであまりお勧めはしません。入居者から相談された場合は今後の入居期間によっては相談に応じてもいいでしょう。
コロナ流行を踏まえた入居率を上げる方法については前回コラムにさせて頂きましたのでご参照ください。
コロナ流行で変わる自宅の役割と入居率を上げる方法
次にコロナに関わらずできる対策について紹介します。
まず、一戸建て物件のケースについてご紹介していきます。一戸建て物件を不動産投資物件として取得した場合、大きく分けて不動産投資家本人がその物件に居住するパターンと、他の人に貸し出して家賃収入を得る、という方法の2パターンが想定されます。どちらのパターンであっても、原則的に建物の管理は抜かりなく行なっておきたいところです。例えば一戸建て物件の場合、数年から10年に1度は外壁の塗装やサイディングの工事などが必要になります。また屋根の塗り替えなど、美観に関しても常に手を入れておかなければなりません。
反対に言ってしまえば、この辺りの美観を損ねないような手入れをしていることが、将来的に資産価値を落とさないことに繋がると言ってよいでしょう。無論、人に貸し出している場合には、居住している方の許可を取る必要があります。しかし大家側からこのような打診があって困るというケースはほとんどありませんので、物件の価値を守るためにも積極的に大家がコミットしていきたいところです。
マンション物件については、やはり中古物件として今後の価値を見出していくためにも、ライフライン関係の手入れや修繕は常日頃から予算をかけておくべきと言ってよいでしょう。
また、一棟まるごとマンションなどの物件を不動産投資物件として取得している場合には、全体を通して入居者の状況についても確認しておくべきです。定期的に立ち入り検査ができれば良いのですが、最近はプライバシーの観点からなかなかそうもいきません。となると、やはりできることとしてはマンションの入居者やアパートの入居者と頻回にオーナー自身がコミュニケーションをとる、というところが望まれます。
もちろんこの辺りの事を不動産管理会社に委託するのも良いでしょう。しかし、やはりオーナー自身が直接確認をしたり、頻繁に現地を訪れて見回りを行うというのも重要なポイントと言えるのではないでしょうか。
特に水道などの基本的なライフラインについては、入居者の満足度を全体的に引き下げてしまう可能性もあるので、定期的にチェックをしておきましょう。最近はインターネット全盛の時代で、こういった物件の情報をもうすぐに拡散してしまうことが考えられます。入居者さんの満足度を高い水準に保つというのも、資産価値を落とさないためにできることと言ってよいでしょう。